私たち多くは恋愛をする時があります。誰かを好きになって、その人がすばらしく思えて、その人といることが自分の欲求のすべてとなり、恋愛をしているといいます。その人と時を過ごすことが、たいへん充実していて、その人を自分だけのものにしたいと感じたりし、適齢期ですと結婚をしたいなんて考えたりします。
この恋愛って、心理的にはいったいどういうことなんでしょうか。どのように理解したらよいのでしょう。ちょっと恋愛の状態をもう少し細かく観察してみましょう。
先ず、恋愛中に相手に会えないとものすごく寂しくなります。早く相手と再会したいと思います。でも、会うことができなかった時には、その人のことを考えます。他の事に集中できないほど夢中で思います。その人と会えた時には大変うれしくなります。心も体も興奮してしまいます。その人を触りたいし抱きたいし、そしてその人がこちらに注目してくれることが、この上なく幸せです。その人といるといつまでも安心です。
お別れは辛いです。なかなか区切りがつきません。相手のいない一時を想像するだけで寂しさが押し寄せてきます。でも、お別れした後には、その人といてどんなに幸せであったかを思い出します。また、早く会いたいと感情が高まります。その反面、一人でいてうつ状態にもなりえます。
さて、恋愛相手に対するこれらの感情の変化を、小さい赤ちゃんのお母さんに対する気持ちとして読み返してみてください。自分の小さい時の母親に対する気持ちを思い出してみたら理解が簡単になるかもしれません。また、子育ての経験のある人は、自分の子が母親に対してどんな気持ちでいるかを、想像してもよいかもしれません。
赤ちゃんはお母さんといないとものすごく寂しいです。お母さんと会えた時にはうれしくて興奮します。そしてお母さんに抱きついて安心します。お母さんと離れると辛くて泣いたりします。
つまり、赤ちゃんの母親に対する気持ちと、大人になって恋愛相手に対する気持ちとは、よく似ていることが解ると思います。と言うことは、恋愛の気持ちというものは、自分が赤ちゃんの時に母親に対して経験した、この世で最初の人間関係において発生した感情であるということが解ります。
人は、生まれて最初に経験した気持ちを忘れずに、その後一生その気持ちを再現させようとしているが如く、恋愛を求めているわけです。いわば、恋愛とは母親の再発見であり、そしてまた、再々、、発見であると言うことができます。よっぽどお母さんが恋しいかのように。
これは、男性にとっても女性にとっても同じです。ある人と出会い、その人が自分のケアをしてくれたり、してくれていると思えた時に、自分がこれまで抱えてきた母に対する感情を、その人に投影します。その後その人と離れがたい状態になってしまうのです。
でも、恋愛をする大人としては、相手が自分の母でないことはよく解っています。恋愛の感情を抱くと同時に、あるところで冷静に相手を見ているところもあります。付き合いが長く続けば続くほど、大人の冷静な見方が上手を取り、恋愛感情が縮んでいくのは免れられないでしょう。こう見ますと恋愛関係は悲劇になってしまいそうですけれど、そんなことはありません。恋愛感情が徐々に薄れていくと同時に、自分が大人として、相手を客観的に掴んで得た知識に基づいた成熟した愛情が育っていくからです。
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