ある女性が、「先日トラフィック チケットを切られてしまった」と不満な様子で、私に話をしました。私は、「ああ、それは面倒なことになりましたねぇ。」と、同情をしたのです。チケットくらいは、車の社会のアメリカでは誰でももらうもの、それほど大それた事件とは思わず、話を終わらせました。もっと何か大切な事があろうと思い、質問を続けたところ、私に恐る恐るある事を告白したのです。
数日前、彼女と同じ仕事場で働いている男性と、ホテルへ行って性交渉をしたというのです。前からその男性に引かれていたというのは、聞かされていましたけれど、まさか結婚をしている身の彼女が、不倫に走るとは思いませんでした。驚きながらも、分析を続けますと、どうやら彼女は、「女としての確信」と言うようなものを探していたようです。
彼女は子供の時から、強い劣等感に悩まされていました。結婚前、今の夫に出会った時、彼の自信と大きな夢に惚れたのでした。自分を彼の側に置くことによって、心中の劣等感から逃れられたのでした。
でも、結婚数年後、夫が仕事上で壁にぶつかってしまったのです。夫は彼女を見下げ、こき使うようになりました。そうすることによって、自分の自信を取り戻そうとしたのです。そして彼女はますます劣等感のどん底に落ちてしまいました。離婚も考えましたが、子供がいることもあり、難しいステップでした。うつ病になり、私の所へ治療を求めて訪れたのでした。そのような状態の彼女にとって、同じ職場のある男性が彼女に振り向いたことは、大きな救いになったのです。 彼女は続けて説明をしました。「こんなこと、初めてだったので、ちょっとあわてて人に見られないように急いでホテルから出たんです。車で左折した時に、お巡りさんに捕まりました。道路の標識をよく見ていなかったんです。」
彼女は、さぞかし不倫について罪に思っていたのではないでしょうか。それ故、罰を受けるために無意識に警官に捕まってしまったのでは。でも、チケットを払うことによって、罪滅ぼしが出来るのでしょうか?!
彼女は不倫行為を大変後悔し、二度としまいと誓ったのでした。警官に捕まったことが、罪悪感を倍増したのは確かです。これをきっかけに、自分の劣等感を不倫をとおしてでなく、治療によって解消することに、専念したのです。治療して半年、彼女はかなり自信をつけました。すると自分を見下す夫とは居ることができなくなり、離婚を決心したのです。
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