コンピューターの機能の仕方を見てみますと、人の脳も同じように動いているのかなと、思う点があります。たとえば、RAM (Random Access Memory)は、コンピューターが今すぐ必要なデータやプログラムを維持する所ですが、ちょうど脳の短期記憶(short-term memory) にあたります。私達も今すぐ必要な内容を記憶しておき、目の前の事柄に対処していきます。仕事が終わりますと、その内容は忘れられてしまいます。
CPU (Central Processing Unit) は、コンピューターがデータを処理するところですが、それがどれくらい速いかによって、コンピューターのスピードが異なります。脳も体の内部、外部から来る情報を処理していきます。人によってそのスピードが違いますし、睡眠などよくとれなかった日には、そのスピードが下がったりします。
コンピューターは、処理されたデータを、ディスクに書きこみます。その結果、後にそのデータが必要になるときに備えます。脳も長期記憶(long-term memory) に情報を記憶しておいて、後、必要なときに、それを引き出します。情報を引き出すにあたって、コンピューターも脳も同じように、インデックスが必要です。つまり、どの情報がどこに入っているかをよく整理して置かなければなりません。コンピューターはインデックスをなくしてしまうと、それにつながるデータもなくしてしまいます。脳も何かを思い出すきっかけをなくしてしまうと、事柄を思い出せません。その代わりに、mnemonic と言って記憶した内容を簡単に引き出せるように、頭文字を並べて、それをヒントとし、思い出せるような努力もします。
コンピューターの発達と共に、それを使って人間の脳のシミュレーションをし、脳をもっとよく理解しようとする試みが起こっています。
最近、目についたのは、コンピューターに人の顔を覚えされるという実験です。コンピューターに人の顔を判断するためのいろいろなルールを教え込み、新しい人物が現れたら、その人の顔が分かるようになるまで、記憶をさせます。そのうちにコンピューターもその人を認識できるようになります。
5分位でコンピューターが新しい顔を覚えるというのですから、結構捨てたものではありません。ロボットに近寄ったら、「小林さん、こんにちは。」なんて挨拶されたら、不思議ですね。
また、この実験によると、白人を記憶させるプログラムを先に書くと、白人の認識はよくできますが、それ以外の人種、たとえばアジア人の顔は間違いが多いというのですから驚きです。人でも、白人の間で生活をしている人が、急にアジア人を見ますと、よく覚えられないということもありますから、コンピューターも人とそっくりです。
その上、これから、アジア人と白人の差を認識するためのルールを、コンピューター自ら書き込んでいくというのですから、たいしたものです。ちょうど人が、人種が変わっても、慣れで顔の認識をできるようになるのと同じです。ここで一番画期的なのは、コンピューターが自らプログラムを書き込んでいくことでしょう。こうすることによって、コンピューターがその環境の変化に適応していくことができます。新しいことを学習できるコンピューターということです。
更に、驚くべき考えは、学習のできるコンピューターの一部のプログラムを壊して、それについてコンピューターがどのように行動し、また、新しい学習をするかということです。これってちょうど人間に何らかの障害がおき、それに対して人がどのように防御したり、新しいことを習っていくかということと、似ています。このようなコンピューターのシミュレーションによって、子供の発達障害の理解を進めたり、いずれは、障害の治療のシミュレーションまで出来上がるかも知れません。
やはり、人間が考え出したコンピューターは人間の脳の働きと似てきても不思議ではありませんね。
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