結婚をする時には、夢と希望に満ちあふれ、以後どのような困難が起こるであろうか、と言うような問いかけは、あまりしないかもしれません。特に恋愛中に結婚をする人は、これに当てはまるでしょう。でも、結婚生活に必然的と言ってよいほど、よく起こることがあります。それは、一方、結婚生活を満足させる要素であり、また、結婚を破壊してしまう要素でもあるのです。
一緒に生活をするようになり、結婚パートナーが身近になりますと、次第に甘えというものが出てきます。甘えがかなえられると満足感があり、それを受け入れられないとがっかりし、怒りや失望などに変わっていきます。甘えは結婚生活の中で、様々な形で表現されます。例えば、おいしい食べ物を作ってもらう、欲しい物を買ってもらう、何かで手伝ってもらう、スキンシップを楽しむ、わがままを通す、性欲を満たしてもらう、等々。これらは結婚以前から存在した心の欲求ですが、身近な人に対して無意識に表現されます。これらがかなえられたり、かなえられなかったりして、結婚生活に満足感が出てきたり、満足感が減ったりします。
もう一つの欲求は、相手に対する嫉妬、恨み、怒り、そして裏切りに対する恐怖を表し、相手を傷つけるということです。これらの感情も結婚以前に存在するもので、甘えと同様子供が親とのやりとりで体験し、そして、育つ上で様々な人との関係で体験して、心の中に潜むようになったわけです。通常これらの感情は、意識したり、無意識でありながらもコントロールしたりして、表面化しません。でも、結婚生活のような身近な関係では、時折ストレス時などに吐き出され夫婦喧嘩になったりします。もちろんこれはしばしば起こり、結婚関係に重荷になるようであれば結婚の満足度を減らしてしまい、結婚関係の破壊に至っていきます。
これらの悪性の感情が夫婦間にしばしば起こったり、甘えの満足感が極めて少なかったりすると、結婚関係は悪い方に進化していってしまいます。例えば、何かについて言い合いをする、文句が耐えない、お互いに冷たくなる、気持ち的な離婚をする、浮気をする、相手を利己的に利用する、結婚を失敗と思い結婚生活に努力をしない、等です。また、たまに夫婦が結婚初期からお互いに近寄れず、甘えることに発展しないこともあります。甘えられないほど夫婦間に距離がありますと、それに比例して、悪性の感情も表現されません。この場合は、夫婦でありながら他人のようですから、結婚生活の満足感は最初からありません。
いったいどうしたらよいのでしょう。自分を幸せにするには相手に近づかなければなりません。でも、近づいたら不幸になるかもしれません。この矛盾が結婚生活の中に含まれているのです。
一つ出来ることは、悪性の感情がどの人の心の中にも存在していることを認めることです。人は誰でも身近な人に対して、怒りや、恨みや嫉妬を経験したことがあると思います。そういう気持ちをたまには持ってしまう自分に気付くことが大切なのです。そしてそれが自分の一部であることを受け入れなければなりません。それが出来るようになると、自分の相手の心の中に潜んでいる悪性の感情も受け入られるようになるのです。結婚したパートナー同士がこのような状態にありますと、悪性の感情が相手に対して出てきた時、それをお互いに耐えることが出来るようになるのです。そうすることによって、結婚関係の悪化を防ぐことが出来るのです。
結婚パートナー同士の悪性感情を受け入られると言うことは、その感情が表現されたときに、それに対して距離を置いて見つめることが出来るようになるということです。悪性感情と一体になって、本気で相手と戦う変わりに、それをいわば通り過ぎる景色であるかのように見られ、客観的な態度をとることが出来ます。そして、結婚関係に悪影響を与えないで済むのです。
私達が精神的に成長することによって、悪性感情を感じたり、表現したりすることは次第に減っていきますが、それを完全にぬぐい取ることは不可能でしょう。でもその存在を認め、それに対して適当な処置を取ることによって、結婚生活をより善いものに作り上げていけると思います。
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