たまに聞かれることですが、心理セラピーってどういうことをするのですか、 とか、お話しするだけなのですか、とか、何かいいアドバイスをしてくれるの ですか、などと皆さんから問われます。最近日本でも心理セラピーという方法 が盛んになりつつありますが、まだ定着しているほどではありませんから、ア メリカに来た日本人が、いったいこれって何であるか、質問があっても不思議 ではありません。
一般的には、心理セラピーとカウンセリングを区別していませんが、違いは あります。カウンセリングでは、自己責任と決断を根底におき、カウンセラー がアドバイスという形で情報をあげることによって、相談者が自分で問題解決 に努力します。ところが心理セラピーでは、アドバイスをすることはあります が、それは一面にすぎず、実際には各種の方法を使って、相談者の思考、感情、 態度や行動を変え、問題解決に至ろうとします。
例えば心理力動的療法では、相談者の対人関係のパターンとそれに現れる感 情を分析、理解しようとします。気分落ち込みの裏には、自己否定的な人間関 係のパターンがあるかもしれません。他人の中にはそれを見抜く人があるかも しれませんが、自分ではなかなか気が付きにくいものです。それをセラピーで 理解し変えていきます。
また、認知療法では、相談者の問題の裏に、不適当な信念に基づいた思考が あるとし、それを明確にして思考の変化を求めようとします。いつも怒りっぽ い人の思考の根底には、「自分が一番優れていて、他の人は自分より劣る。」 と言うような、見方が潜んでいるかもしれません。それをもう少し現実的に変 えることによって、怒りが減るかもしれません。
セラピーでもカウンセリングでも大切なことは、自分の秘密が厳守されると いうことです。これはカウンセラーと相談者との関係を特別なものにします。 なぜなら、他の人間関係では、自分の秘密が漏れることを恐れたり、自分の言 ったことが誰かを傷つけてしまう可能性を、恐れなければなりません。その心 配をせずに自分のことを追求できることは、自己を省みる絶好の機会を作るだ けでなく、大変ユニークな人間関係を経験する時でもあるのです。
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