無意識の分析

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 皆さんもご存知かと思いますが、精神分析で何を分析するかと言いますと、無意識の分析をするということです。もちろんこれは、患者さんの無意識の世界を分析するという意味ですが、それをするにあたって、セラピストは自分自身の無意識の分析を行わなければなりません。自分の無意識を理解することによって、患者さんの無意識を理解できるようになるのです。この考えの根底には、患者さんとセラピストの無意識はどこかでつながっているということがあるからでしょう。

 無意識というものは私達にとって見えないものです。その見えないものをどのように理解するのでしょう。確かに私達の考え、感情や行動の多くは、私達の意識できないところで起こっています。ですから、それらについて私達は知りません。でも、その存在を告げるものがあります。それは無意識のサインなのです。そのメッセージも考えや感情や行動という形をとって伝えられてくるのです。でも、そのメッセージはすぐ意識できるようなものではなく、変装されて送られてきます。ですから、その変装を暴くまでメッセージの意味がつかめません。そのような無意識からのメッセージは日常、無視したり見逃したりしてしまいます。しかし、セラピーのセションではそれに焦点を当てて、理解をしようと試みることが興味深いところであると思います。

 患者:「私は父親から虐待を受け、その結果非常に怒りやすい性格になってしまった。そのために自分の子供に対して激怒してしまうことが過去によくあった。でも、セラピーをしてそれが解ってきたので、そのような怒りを子供には植え付けないようにしようと思っている、、、」

 セラピスト:話をよく聞いているつもりなのだが、どういうわけか、先日会ったもう一人の患者の事を思い浮かべてしまう。そうすると、目の前の患者の話に集中ができない。ふと、われに返って、いったい自分に何が起こっているのかと考える。(独り言:そういえばあの先日の患者さんは、自分のことを表現できないで困っていたな。それと今の虐待の話と何か関係があるのかな。あーっ、今の人は自分の子供に怒りを植え付けないようにと言っていたけれど、実はもう随分そうしてしまっていて、今となってはもう遅いかなと感じる。でも、それをこの人に面と向かっていえないな。自分の表現をできないもう一人の先日の患者さんのイメージは、実は自分(セラピスト)が目前の患者さんに今の自分の気持ちを言えないことを物語っていたのか。ということは、自分の壁をのりこえてこの人に気持ちを伝えた方がいいのかな、、、)

 患者:「私を虐待した父親に面と向かって、いかに私を苦しめたかを言おうと何度も思った。でも、今となって、彼も年をとり、よぼよぼ爺さんになってしまった。虐待のことなど出したら、ショックで死んでしまうかもしれない。そう思うと、父親をもうそおっとしておいてあげたいという気持ちになった、、、」

 セラピスト:(独り言:この患者さんは、父親に対して伝えたいことがあるのだけれど、父親の年も考えてそおっとしてやりたいのか。おーっ、このメッセージは、何と私に向けられているのかもしれない。彼が自分の子供に対して虐待じみたことをしてしまったことについて、私から直撃して欲しくないということなのかな。とりあえず、彼の虐待に関して触れることは、次の機会を待つことにしよう。)

 というように、セラピストの心の中で、自問自答が行われ、患者さんの無意識の理解が進んでいきます。例のこの患者さんが、自分の子供に対する虐待について、私に触れて欲しい時には、それなりの無意識のメッセージが届くことでしょう。

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