ここロサンゼルスでは、日本で一般的に言う、車内での痴漢行為と言うのは、あまり聞かないですね。もちろんロスでは、自分で車を運転してしまいますから、痴漢が起こるきっかけが少ないと言ってよいでしょう。
アメリカ人の間で、日本の車内での痴漢、すなわち、知らない女性の体にさわること、のようなことが起こらないわけではないのです。かの有名大学、ハーバードの学生がある日、私のところに診断に来ました。彼曰く、大学の近くの公園をジョッギングしていたとき、前を走っていた女性のおしりを後方からさわってしまったのだそうです。即逃げたものの、警察に通報され、御用となってしまいました。大学から停学処分を受け、心理セラピーなしでは戻れないということで、はるばる地元のロスまで戻って来たのでした。
痴漢行為の特徴として、「これは性的行為である」ことはみなさんもお気づきのことと思います。確かに、それをする人は、性的ファンタジーを抱き、通常の社会ルールを無視したり、またはそれがゆるんだりして実行に移してしまいます。 よく考えてみますと、このファンタジーは女性とのある人間関係を描いています。自分がこの女性をさわって、性的快楽を得るという限られた人間関係なのです。ここで問題なのは、その人間関係が一方的であり、相手から承諾を得ていないことです。様々な痴漢行為の共通点は、犠牲者の気持ちを完全に無視することなのです。そして、自分で勝手に相手の気持ちを想像し信じ込みます。心理的にはこれを "denial of subjectivity" と言って相手の主観の存在を否定する事に値します。
このような人間関係は、異常というよりは、小さい子の他人に対する関係と似ています。小さい子は自分のことばかり大切で、相手の気持ちがまだよくつかめません。と言うことは、痴漢行為はある意味で大人が子供に後退してしまった、と言えるでしょう。
大人の人間関係にはフラストが多いことがあります。そのときにある人は後退現象を起こし、子供のような行動にでてしまうのです。その上、それに性的要素を付け加え、フラストであったものを快楽に変えてしまおうと言う、こんたんがあるのです。ハーバードの学生も、勉強からのフラストを大変感じていました。
痴漢はそのようなときに起こったのです。 付け加えますと、痴漢行為をする人の中には、フラストがなくてもする人がいます。このグループはまたちょっと違った心理状態がありますので、また他の機会と言うことで、ここでは触れずにおきましょう.
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