人間関係をよくするために、コミュニケーションを改善しなければならないと、よく言われますが、いったいどのような会話がよいのでしょう。今回は、会話の種類を4つ取り上げ、そこにあるコミューニケーションの度合い、人間関係のありさまに焦点を当ててみようと思います。
先ず第一の例は、人間関係の理解が未だ初期で、相手に自分のことを伝えるというよりも、自分の欲求が先に立ち、相手を利用してしまう状態です。
A:「ねー、明日映画に行きたいんだけれど、一緒に行ってくれる。」
B:「えー、映画。そんな時間ないよ。」
A:「いいじゃないの、たまには付き合ってくれても。」
B:「だめなものはだめだ。」
存在するのは自分の世界だけで、相手のことはあまり考えてないのが解ると思います。次の例は、自分の欲求ばかりでは、人に嫌われることを認識し、人前では自分の欲求を出さないようにしている状態です。もちろんこれではよいコミューニケーションにはなりません。「B」さんの反応に注目をしてください。
A:「明日は休みだからどこかに出かけようか。」
B:「そうですね。」
A:「どこがいいかな。何かしたいことがあるかい。」
B:「いや、べつに。」
A:「映画を見に行こうか、それとも久しぶりにビーチでも行こうか。」
B:「えー。」
A:「君は、どっちがいい。」
B:「どちらでもいいです。」
この調子でいったら、「B」さんは自分の欲求もかなえられず落ち込みそうです。これではいけないので、やはり自分のことははっきり伝えるようになります。でも、それをするには結構たいへんで、人から拒絶されることを恐れながら、自分の表現をします。それにもかかわらず、自信がもてるようになることは、自己発達上、結構大きなステップであると思います。
A:「明日は暇だから、映画でも行こうか。」
B:「私はビーチに行きたいな。屋内で時間を過ごしたくないから。」
A:「この間言っていた映画随分面白いって皆言っているよ。ビーチは未だちょっと寒いんじゃーないかな。」
B:「そんなことないよ。では、ジャンケンで決めようか。」
確かにAさんBさん両方とも自分の気持ちを表現しています。相手のことを無視はしていないので、公平と思われるジャンケンでけりをつけようとしました。相手の存在を認めて、自分と同じように大切であることを客観的に掴んでいます。でも、相手を自分の中に含むことはできず、相手が葛藤やフラストの原因となっています。
最後の例は、相手と自分との葛藤を解決しようとする試みを含んでいます。自分の存在も相手の存在も肯定し、二人の意見を融合しようとしています。
A:「明日は暇だから、映画を観に行こうと考えているけれどどう思う。」
B:「それは、面白そうだね。私はビーチへも行きたいと思っているけれど、あなたはそれについてどう思う。」
A:「久しぶりにビーチはいいね。ちょっと未だ寒いだろから、上着を持っていかなければ。」
B:「じゃー、最初にビーチへ行って、散歩でもして、それから映画館に寄ったらいいかもいれない。」
これは仲が良くていいですね。相手の言ったことを頭に入れて、それを含めながら自分の考えを発展させ、発言をします。言われた相手は、また相手の意見を頭におきながら、自分の意見を発展させます。