過去35年間 Social Security に納められた金額により計算されますが、多く納めた人(高賃金労働者)と少なく納めた人(低賃金労働者)との差を少なくするような配慮がなされています。また、35年前から現在までの貨幣価値がなるべく等しくなるよう毎年のInflation
等も考慮されて計算されています。例えば、1941年生まれで今年62歳を迎え、Social
Securityを65歳8ヶ月*(FRA)になって受け取る場合*(PIA),及び今年62歳から受け取る場合の35年間の月平均給料に対する本人の受け取り金額は表2のようになります。
【表2.35年間の月平均給料に対する本人の受け取り金額】(今年62歳を迎える人に対して)
35年間の月平均給料 |
65歳8ヶ月(PIA)
(毎月) |
62歳(PIAの76.6%)
(毎月) |
$2,000 |
$991 |
$780 |
$3,000 |
$1,311 |
$1,005 |
$4,000 |
$1,572 |
$1,205 |
$5,000 |
$1,722 |
$1,320 |
$5,729以上 |
$1,831 |
$1,404 |
*FRAとは、Full Retirement
Age の事であり、退職後の毎月の受け取り金額が、100%支給される年齢です。FRAにて毎月支給される金額はPIA(
Primary Insurance Amount)と言います。FRAは生まれた年により表4のように少しずつ変化いたします。これは寿命が長くなってきていること及びSocial
Security
に蓄えられる金額を考慮し徐々に高齢化されていくと思われます。
これは2003年現在の数値であり毎年COLAs(Cost
Of Living Adjustment)の指数により変わりますのでご注意ください。表2は、62歳及び65歳8ヶ月より支給を受けた数値ですが、63歳及び64歳ではそれぞれPIAの82.2%、88.8%となります。また、表1に記した配偶者及び子供も受け取る権利があります。表2に掲げた本人の配偶者及び子供の受け取り金額率は表3のようになります。説明上、労働者本人は、夫、配偶者は妻とします。
【表3.家族の受け取り金額】(毎月)
表1.の条件の配偶者(妻)の年齢 |
表1.の条件の子供 |
FRAで申請 |
62歳で申請 |
夫のPIAの50% |
夫のPIAの35.8% |
|
夫のPIAの50% |
FRAを迎えても十分生活ができる場合、70歳まで遅らせることができます。生まれた西暦によりFRAから遅らせた年齢分DRCs(Delayed
Retirement Credits)を得ることができ、毎月の受け取り金額がその%に応じて増えることになります。
【表4.Full Retirement Age (FRA)
の変化】
生まれた年 |
FRA |
1938年以前 |
65歳 |
1938年 |
65歳2ヶ月 |
1938年 |
65歳4ヶ月 |
1940年 |
65歳6ヶ月 |
1941年 |
65歳8ヶ月 |
1942年 |
65歳10ヶ月 |
1943〜54年 |
66歳 |
1955年 |
66歳2ヶ月 |
1956年 |
66歳4ヶ月 |
1957年 |
66歳6ヶ月 |
1958年 |
66歳8ヶ月 |
1959年 |
66歳10ヶ月 |
1960年及び以降 |
67歳 |
【表5.生まれた年に対するDRC】
生まれた年 |
DRC/ 年 |
1931〜32年 |
5.0% |
1933〜34年 |
5.5% |
1935〜36年 |
6.0% |
1937〜38年 |
6.5% |
1938〜40年 |
7.0% |
1941〜42年 |
7.5% |
1943年以降 |
8.0% |
たとえば1950年生まれの方は表4より66歳でFRAを迎え、そのときの毎月の受け取り額が$1,741であるとします。この方が66歳では受け取らず70歳まで伸ばしたとすると受け取り金額は
8.0%×4年=32%
毎月の受け取り金額は
$1,741+($1,741×0.32)=$2,998
となり、この金額にCOLAsが加味されるので少し多くなります。
1.FRA(Full Retirement Age)における毎月の受け取り金額
−PIA(Primary
Insurance Amount)
前号ではざっとソーシャルセキュリティーの要旨を説明いたしましたが、今回は退職した場合、本人及び配偶者のソーシャAルセキュリティーからの毎月の受け取り金額がおよそどの位になるのか見てみましょう。まず、表6は、各年齢と年棒から割り出した、FRAにおける毎月の受け取り金額(PIA)です。(表の作成に関する計算の説明は次の機会に譲ります。) 基本的には22歳から働き始めて毎年平均の昇給があり、現在の年棒に至っているとします。本表の配偶者の数値は、配偶者が規定の年数働いていなかった場合です。配偶者が長期にわたって働いている場合には配偶者の労働歴も計算され、本表の数値以上になることもあります。また、本表では61歳以下に対するCOLAs(Cost
Of Living Adjustments)を考慮していませんので、実際の受け取り金額はもう少し多くなります。
表6より、今年65歳で退職し現在の年棒が$50,000の方はFRAにて毎月$1,466を受け取ることになります。今年65歳になる方は1938年生まれ(2003年ー65歳=1938年)なのでFRAは、前号の表4より65歳2ヶ月です。配偶者が同じ年齢であれば65歳2ヶ月になり、本人の50%である$733を受け取ることができます。配偶者に関するその他のケースについては次の機会に説明します。
2. 受け取りを遅らせた場合
それではこの方が65歳2ヶ月では受け取らず、4年後の69歳2ヶ月まで延ばしてから受け取り始める場合には毎月幾らにでしょうか?
前号の表5より、1938年生まれの方のDRCs(Delayed Retirement Credits)は6.5%です。従って受け取り金額は、26.0%(6.5%x 4年=26.0%)増え、毎月$1,847.16 ($1,466x1.26%=$1,847.16)となります。
【表6.FRAにおける毎月の受取金額−PIA】
2003年現在の年齢 |
受取人 |
現在の年棒を目安にしたPIA |
$20000 |
$35000 |
$50000 |
$65000 |
$87000以上 |
65歳 |
本人 |
$803 |
$1158 |
$1466 |
$1595 |
$1741 |
|
配偶者 |
$402 |
$579 |
$733 |
$798 |
$871 |
63歳 |
本人 |
$841 |
$1210 |
$1539 |
$1683 |
$1849 |
|
配偶者 |
$421 |
$605 |
$770 |
$842 |
$925 |
61歳 |
本人 |
$850 |
$1224 |
$1556 |
$1712 |
$1895 |
|
配偶者 |
$425 |
$612 |
$778 |
$856 |
$948 |
55歳 |
本人 |
$858 |
$1237 |
$1566 |
$1744 |
$1981 |
|
配偶者 |
$429 |
$619 |
$783 |
$872 |
$991 |
50歳 |
本人 |
$863 |
$1247 |
$1572 |
$1752 |
$2010 |
|
配偶者 |
$432 |
$624 |
$786 |
$876 |
$1005 |
45歳 |
本人 |
$869 |
$1257 |
$1579 |
$1761 |
$2027 |
|
配偶者 |
$435 |
$629 |
$790 |
$881 |
$1014 |
40歳 |
本人 |
$875 |
$1269 |
$1587 |
$1771 |
$2044 |
|
配偶者 |
$438 |
$635 |
$794 |
$886 |
$1022 |
35歳 |
本人 |
$881 |
$1279 |
$1593 |
$1780 |
$2056 |
|
配偶者 |
$441 |
$640 |
$797 |
$890 |
$1028 |
30歳 |
本人 |
$884 |
$1284 |
$1597 |
$1784 |
$2059 |
|
配偶者 |
$442 |
$642 |
$799 |
$892 |
$1030 |
3.早期受け取りにした場合
早期退職のため、FRA以前にソーシャルセキュリティーを受け取る場合は、表7のように減少します。表7では1年単位で区切って記載してありますが、実際には上記の年の中間にも受け取ることができます。その時の計算方法は次の様になります。FRAより36ヶ月前までの期間に受け取る場合には、早める月数に5/9%(9分の5%)を掛け、100%から引いた率になります。たとえば1950年生まれの方はFRAが66歳なので65歳と3ヶ月から受け取るとすれば、FRAより9ヶ月早く受け取ることになります。従い、その割合はPIAの95%(100%-9x5/9%=95%)
となります。また、36ヶ月よりも前に受け取る場合には、36ヶ月に対しては上記の計算指数を適用し、36ヶ月を超える月数に対しては5/12%
(12分の5%) を適用します。例えば1950年生まれの方が、40ヶ月早く受け取る場合には次の計算により78.3%となります。
100%−(36x5/9%
+4x 5/12%) =78.3%
前回触れましたが、通常の退職の場合、62歳以前には受け取れず、また70歳以後には遅らせることができないことを念頭に置いておいてください。
4.どちらが得?
それでは早期受け取りとFRAにおける受け取りとではどのように異なるか、例題をもとに計算してみます。
例題1:山本さんは、1945年生まれです。ソーシャルセキュリティーを62歳からの早期受け取りにするか、またはFRAにおける受け取りにするか迷っています。山本さんの次のデータを元に計算してみましょう。
(1)生まれ年:1945年
(2)FRA(前号の表4より):66歳
(3)PIA:$1,500とする。
(4)62歳からの受け取りは表7より
PIAの$75.0%
(5)62歳から数えて、66歳(FRA)までには48ヶ月ある
【表7.早期受け取り時の割合】
生まれた年 |
早期受け取り時年齢(PIAを100%とする) |
62歳 |
63歳 |
64歳 |
65歳 |
66歳 |
1938年以前 |
80.0% |
86.6% |
93.3% |
100% |
- |
1938年 |
79.1% |
85.5% |
92.2% |
98.8% |
- |
1939年 |
78.3% |
84.4% |
91.1% |
97.7% |
- |
1940年 |
77.5% |
83.3% |
90.0% |
96.6% |
- |
1941年 |
76.6% |
82.2% |
88.8% |
95.5% |
- |
1942年 |
75.8% |
81.1% |
87.7% |
94.4% |
- |
1943〜54年 |
75.0% |
80.0% |
86.6% |
93.3% |
100% |
1955年 |
74.1% |
79.1% |
85.5% |
92.2% |
98.8% |
1956年 |
73.3% |
78.3% |
84.4% |
91.1% |
97.7% |
1957年 |
72.5% |
77.5% |
83.3% |
90.0% |
96.6% |
1958年 |
71.6% |
76.6% |
82.2% |
88.8% |
95.5% |
1959年 |
70.8% |
75.8% |
81.1% |
87.7% |
94.4% |
1960年及び以降 |
70.0% |
75.0% |
80.0% |
86.6% |
93.3% |
まず、62歳からの受け取り金額は$1,125($1,500x0.75=$1,125)でありFRAにて受け取る金額と比べると毎月$375($1,500ー$1,125=$375)少ないことになります。山本さんは、66歳になるまでに$54,000($1,125x48=$54,000)を受け取ります。FRAである66歳より受け取り始めた場合と比べ、66歳から数え144ヶ月($54,000/$375=144)目である78歳でブレークイーブンとなります。従って、この数値だけ単純に比較した場合、78歳以上生きるのであればFRAである66歳より受け取るほうが得です。ご参考までに同様の要領で66歳から受け取る場合と70歳まで遅らせて受け取る場合を比較すると、82歳6ヶ月でブレークイーブンとなります。
ソーシャルセキュリティーを受け取る年齢は個人を取り巻く環境、例えば62歳、65歳でも働いており収入があるか、その場合の連邦税はいくらになるか、家族構成はどうか、家系は長命かどうか、現在持っている財産はいくらか、将来入ってくる遺産はいくらになるか、等により異なりますので、考えられることを洗い出し、会計士とも相談してご自分に適した年齢を選ぶことが大切です。
1.身体障害になった場合の受け取り金額
もしも、FRA(Full
Retirement Age)以前に本人がDisabilityになってしまった場合には、PIA(Primary
Insurance Amount) が毎月支給されます。もしも既にソーシャルセキュリティーの早期受け取りをしていた場合には、Disability
Benefitsの額がPIAよりも少なくなります。FRA以降にDisabilityになった場合には、PIA以上の額を受け取ることができます。家族にも、本人の受取額の半額を最大限として支給されます。細かい規則もありますので次の例題で説明いたします。
【例題】
佐藤一郎さんは今年2003年2月15日に49歳で身体障害になり働けなくなりました。佐藤さんのPIAは$1,200であり、奥さんの花子さんは49歳、子供の太郎君は12歳、次郎君は8歳です。
(1)2003年8月からの受け取り金額
身体障害になった場合、カレンダーの月でフルに5ヶ月待たなければならないため、支給は8月からとなります。家族の一員はそれぞれ本人の50%支給されますが、本人及び配偶者と子供2人の4人家族で受け取れる最高額は本人のPIAの150%です。従って、毎月の受取額は計算1となります。
(2)6年後2009年の受け取り金額
太郎君は18歳になり6月に高校を卒業するため2009年7月からの毎月の受け取り金額に変わりはありませんが内訳は計算2になります。
(3)8年後2011年の受け取り金額
次郎君はまだ高校生ですが16歳になったので、奥さんにはもう支給されません。(Financial
Securityミニ講座21 参照)。次郎君は卒業しておらず、まだ19歳にはなっていませんので、次郎君には受け取る権利があります。従って、毎月の受け取り金額は計算3の様になります。
(4)花子さんが66歳になった時の受け取り金額
この時点で子供は既に高校を卒業していますので子供には当然支給されません。花子さんは1954年生まれですので、66歳でFRAを迎えます(Financial
Security ミニ講座21 表4 を参照)。この時点では身体傷害ではなく、退職した場合の受け取り金額となり、その際の毎月の受け取り金額は本人の50%となります。(計算4)
また、花子さんは62歳になれば“退職した場合の受け取り金額”をもらうことができます。その場合には本人の35%が支給されますので、毎月の受け取り金額は計算5となります。
注:上記の例題ではCOLAs (Cost Of Living Adjustments)を考慮していませんが、実際の受け取り金額は毎年少しずつ増えます。)
|
計算1 |
計算2 |
計算3 |
計算4 |
計算5 |
本人 |
$1,200 |
$1,200 |
$1,200 |
$1,200 |
$1,200 |
奥さん |
$200 |
$300 |
$0 |
$600 |
$420 |
太郎君 |
$200 |
$0 |
$0 |
|
|
次郎君 |
$200 |
$300 |
$600 |
|
|
合計 |
$1,800 |
$1,800 |
$1,800 |
$1,800 |
$1,620 |
2.本人が死亡された場合の家族の受け取り金額
残された家族構成 |
家族の受け取り
金額 /
月 |
奥さんが60歳以下で、2人以上の16歳以下の子供がいる。 |
本人のPIAの17.5%ぐらい |
奥さんが60歳以下で働き、十分な収入があり16歳以下の子供が1人いる。 |
本人のPIAの75% |
奥さんが60歳で働いているが、十分な収入はなく、子供たちは既に高卒。 |
本人のPIAの71.5%
|
奥さんが60歳では申請せず、FRAまで待った場合 |
本人のPIAの100% |
計算は複雑ではありませんが、誌面の都合上、詳しい説明は割愛させていただき、だいたいの毎月の受け取り金額を記します。基本的には奥さん及びお子さん1人につき本人のPIAの75%ですが、家族としての最大限度額が決められています。
以上ソーシャルセキュリティーに関しては最近アメリカに来られた方にとってあまり関心がなかったかもしれませんが、月々の個人給与から6.2%も引かれ、更に会社としても同じ金額をアメリカ政府に支払い、合計では12.4%も支払っていますので、概要を知っておくべきと思いました。また、7,8年以上滞在しておられる方は、日本の厚生年金の将来が不安な状況下においてはご興味があると思いましたので、執筆いたしました。いずれにしても将来の年金は日米問わず改悪される要素が多々あり注意しておく必要があります。