私は2回帰国子女を体験した。まずはニューヨークから小学校5年生で帰ってきたときは完全な帰国子女だった。だがその当時、そんな意識はなかった。そもそも帰国子女ということばすらあまり聞かれてなかったからだ。そして、カナダの大学を卒業して帰ったときはさらに帰国子女とは思わなかったのだ。それは大学を卒業して帰ってきたからだ。そのため、カナダから帰国した自分が帰国子女と
知ったのはだいぶあとになってからだった。
村山氏という宇宙の研究をしている彼はサンフランシスコ補習授業校で生徒たちに、「皆さんは世界でいちばんラッキーです」と語ったそうだ。それは彼らが日本の文化や考え方を持ちつつ、世界一を自認するアメリカのやり方を身近に体験しているからだという。複数の文化の中にいると、人の考え方はさまざまで、それぞれに文化的な背景があり、どれも絶対ではないということが実感できるから
だそうだ。そして、「文化の相対化。人は自分と違う考えを持っていて当然。一歩下がってものごとを見ると、たいていのことには驚かなくなりますよ。」と締めくくったそうだ。
考えてみると、私は人の生き方については、もうちょっとやそっとのことでは驚かなくなっている。ああ、そうなの。ぐらいにしか思わなくなった。つまり、それだけいろいろな価値観、考え方、生き方を目の当たりに見てきたからだ。みんな違っていい、違うからこそこの世の中おもしろいのだからだと思う。みんながみんな同じ道を歩まなくてもいいのだ。そんなのおもしろくない。人の数だけそ
れぞれの生き方があってよく、それを選べばいい。そう思っている。
そのため、私のカウンセリングもみんなに答えを出させている。答えは決してひとつではないからだ。そして一番いい答えをもっているのはその人自身だからだ。