孫娘からの質問状−おじいちゃん戦争のことを教えて


前々からずっと気になっていた本ですが、やっと取り寄せて読むことができました。

家族のNY駐在とともにNYの高校に通うことになった孫娘(景子さん)から、ある日、分厚い手紙が届きます。歴史のクラスで第二次世界大戦について学ぶことになった孫娘が「戦争の見方や体験は国によって違いがあるはず。」という歴史の先生の指導の下、かつて軍人を目指して陸軍士官学校に通っていた祖父に質問状をしたためたのです。

「おじいちゃんが受けた義務教育は?」「なぜ、軍人の学校に進んだの?」「陸軍士官学校の教育はどんなだったの?」「戦後の学生生活で何を考えていたの?」「アメリカとの戦争は正しかったと思う?」「極東軍事裁判について、どう思う?」「天皇について、おじいちゃんの考え方は?」「日本のこれから、そしてアメリカとの関係は?」etc...

これらの質問に対して、祖父は戦前戦後の日本と自分自身の人生を振り返りながら高校生の孫娘にもわかるような言葉を選びながら語りかけるように応えていきます。

「『戦争犯罪人は一人前に汽車に乗ったりするな。歩いて行け!』。制服を着ていたから、私が陸士の生徒であることは一目でわかる。それを知った上での罵声だった。ついこの間までは、国を守るために命を捧げようとしている若者として、尊敬の目で見られていたのだ。おじいちゃんは沈黙して、屈辱にただ唇をかむしかなかった」

「おじいちゃんは、・・・・と思ったのだよ。」「景子・・・・わかるかい?」という優しい口調に自分の過去を孫娘と共有できる喜び、辛い歴史を通して自分が学んだことを孫娘に語り継いでもらえる喜び、筆者自身の語り継ぐことへの使命感そして何よりも孫娘への愛情が伝わってきます。

軍国主義へと歩んだ日本、戦争突入、混乱の戦後、価値観の転覆、日本経済の復興、このあたりの歴史を私達は詳しく学校で習うことが全くありません。孫娘の景子さんもNYの高校に通い始め、自分がいかに日本の近代史について知らないかを痛感し、戦争の話になっても日本の立場について全く説明することができない悔しさを味わいました。

私自身も、全く同じ思いを時々しますし、私の長男もMiddle School(中学)に通う頃から第二次大戦について学ぶようになり、アメリカ=完全正義という歴史観で行われる授業に疑問を感じることもあるようです。

今までSweetHeartの掲示板には、かつて日本が占領、侵略した国に住む方たちから、現地での反日感情に日々接して、日本人であることが恥ずかしくなった、どう対処していいのかわからない、などという書き込みが時折ありました。この本を読むと、多くの日本人がどこかで感じている、罪悪感とは一体何なのか?なぜ罪悪感を感じるのか?歴史の授業で教えられなかった部分がなんだったのか?なぜ教えられなかったのか?を解明してくれるはずです。

この本を読むことで、第二次世界大戦当時の日本をよく知らないままに完全否定するのではなく、当時の日本の国際的な立場、歴史の流れ、その時間に生きた日本人の思いをより深く理解できるようになると思います。(戦争を肯定するとか日本の行為を正当化するという意味ではなく。)

また、最後に挿入されている孫娘景子さんからの「おじいちゃんのレポートを読んで」という祖父への返信には、景子さんが祖父の手紙から考え学び、大きく成長した様子が伝わってきて感動的です。「・・・・これまでは、日本の歴史に自信が持てなくて、あまり詳しく知らないままに、また、あまり深く知りたくないという気持ちもあって、顔を伏せるような気分がありました。でも、そんな気分をおじいちゃんのレポートが吹き払ってくれたのです。おじいちゃんのレポートは、いまでも読み返しています。これからも読み返していくでしょうこれは私の原点になってくれそうな予感がします。」

「・・・しかし、おじいちゃんのレポートを読み、日本がコリアを併合したわけも、そのために受けたコリアの人びとの痛みもわかってみると、日本とコリアの間には大きな歪みがあることを感じます。

日本人である私も私の友達も、日韓併合のことはほとんど何も知らない。だが、仲良しのコリアンは日韓併合のことをよく知っていて、日本に対して憎しみの感情を持っている。この違い。それは教育の違いだということがわかってきました。・・・・・(中略)・・・しかし、このようなことでは、おじいちゃんのいうように、歴史に学ぶことはできないと思います。日本がコリアを併合した事実を知り、そこにあった過ちを知り、コリアの人びとが受けた痛みを知る。コリアの人も同じようにして、日本への併合を防ぐことができなかったコリアの問題点を知り、その過ちを知り、その過ちによって受けた痛みを学ぶ。そうしてお互いの違いを知り、それを認め合い、受け入れることで、私達の世代は新しい日韓関係を結ぶことができるのだと思います。・・・・(中略)・・・そういうことを仲良しのコリアンと話し合いました。彼女はうんうんとうなずいてくれました。これもおじいちゃんのレポートで学んだことの一つです。」

高校生以上の人たちには是非一読してもらいたい本だと思います。

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