第二次世界大戦直後の共産圏下のブルガリア。父親がレジスタントの容疑で連行されたため両親と引き離され収容所で死と隣り合わせの過酷な強制労働の日々を送りながら育った12歳の少年Davidが、希望ではなく絶望から収容所から脱走します。脱走を助けてくれた人の「デンマークへ向かってひたすら北に向かいなさい。道中誰も信じてはいけない。」という言葉とコンパスとデンマークに着くまで決して開けてはいけないと言われて託された一通の封書だけを頼りに北を目指します。
さまざまな試練を乗り越え、いくつかの幸運に恵まれつつ、ようやくスイスにたどり着いたDavid。そこで明かされる封書と逃避行の秘密、そして驚きと感動のクライマックスが・・・。
この映画は、単なるドキドキハラハラの少年の冒険物語ではありません。
ナチスの強制収容所体験を著した「夜と霧」で有名なV.E.フランクルが、その著「それでも人生にイエスと言う」の中で「ナチスの親衛隊員である収容所所長が、ひそかに自分のポケットマネーで囚人のために薬を調達していた。一方、同じ収容所の最年長の囚人は、囚人仲間をぞっとするような仕方で虐待していた。・・・(それらの体験によって)すべては、その人がどういう人間であるかにかかっていることを、私たちは学んだのです。最後の最後まで大切だったのは、その人がどんな人間であるか「だけ」だったのです。」と書いていますが、この映画は少年Davidの目を通して同様のことを語っているように思いました。
ヨーロッパの美しい風景も感動的です。
原作はデンマークで1963年に出版され最優秀北欧児童小説賞ギルデンダル賞を受賞したほか、アメリカ図書館協会賞児童文学部門を獲得したそうです。
www.iamdavidmovie.com/ I am Davidのホームページ