60Minutesという番組で現在、NFL(アメリカン・フットボール)で一番価値のあるプレーヤーと言われているL.T.(LaDainian Tomlinson)へのインタビューをしていました。
息子たちのアメフトの試合を見ていると、子どものレベルであっても、複数のプレーヤーが一瞬の内に入り乱れるので、ボールが今どこにあって、何がどうなっているのか見逃しがちなのですが、L.T.は「(試合中ボールを腕にタッチダウンを狙って駆け抜ける時)自分には全てのプレーヤーの動きがスローモーションで手に取るように見える。」というようなことを言っていました。
それを聞いて昔、打撃の神様と言われた川上哲治さんの「ボールが止まって見える」という名台詞を思い出しました。川上さんは朝夕寝食を忘れて打撃練習に打ち込んだ後、ボールが止まって見えるほどになったそうです。L.T.も、練習量は他の人が足元にも及ばないほどだそうです。
「才能」プラス「努力」で、人間というのは超人的な事もできるようになるのだと実感したL.T.のコメントでした。
そう言えば、北斎の有名な波間に富士山が見える「富嶽三十六景」の絵ですが、あの鷹の爪のように見える波しぶきは北斎の想像による創作ではなく、ゼロ・コンマ何秒の瞬間をとらえることのできるハイスピードカメラで波を撮ると実際にあのように見えるのだそうです。江戸時代に生きた北斎には肉眼で、それが見えていたわけです。
北斎は、こんな言葉を残しています。「私は6歳の頃から、ものの姿を絵に写してきた。50歳の頃からは随分たくさんの絵や本を出したが、よく考えてみると、70歳までに描いたものには、ろくな絵はない。73歳になってどうやら、鳥やけだものや、虫や魚の本当の形とか、草木の生きている姿とかが分かってきた。だから80歳になるとずっと進歩し、90歳になったらいっそう奥まで見極めることができ、100歳になれば思い通りに描けるだろうし、110歳になったらどんなものも生きているように描けるようになろう。どうぞ長生きされて、この私の言葉が嘘でないことを確かめて頂きたいものである」。
ところで、L.T.は5歳の時に両親が離婚。母親に育てられ8歳の時に「大きくなったらお母さんに大邸宅を建ててあげる」と約束し、その約束を果たしたそうです。同時に、彼は2,000人の貧しい人たちに自ら食事を配ったり、恵まれない子どもに多額の奨学金を出したり、自分のゲームに招待したりと、社会貢献も半端じゃないそうです。すごい人というのはいるもんです。