NHKスペシャルでやっていた「女と男ー惹かれあう二人、すれ違う二人」が、とても面白かったので、要約してみます(要約と言っても長いですが)。
まず恋愛を脳科学の見地から解き明かします。激しく恋をしている男女の脳を調べると男女ともに同じ場所が活発に活動していました(恋愛中枢)。それは正に人に喜びや快感を感じされる神経伝達物質ドーパミンが作られる場所でした。
反対に恋愛中の男女の脳で、活動が低くなる場所もありました。それは物事を否定的に捉えたり、否定的な判断を行う場所です。「恋は盲目」と言うのも恋愛中は相手への批判能力が抑制されるからだったのです。
ところが、恋する男女の脳で活発に活動している部分に違う場所もありました。
男性の場合は視覚を司るエリアでした。世界各地で男性に好ましいと思う女性の体型を選んでもらったところ、世界共通で腰のくびれ(ウェストとヒップの比率)が7対10の体型が好まれました。その比率は女性が出産適齢期になると近づく体型の比率でした。何百年もの人類進化の過程で男性は、健康な赤ちゃんを産んでくれる女性かどうかを自分の目で見極めることが重要だったからだと考えられます。
女性の場合、活発になるエリアは記憶を司るエリアでした。人間は直立2足歩行を始めた結果、骨盤の形が変化し産道を大きくできないという制約が生じる一方、脳の発達とともに頭が大きくなったため、赤ん坊を未熟な状態で産まざるをえなくなりました。女性は、つきっきりで未熟な状態の赤ちゃんの世話をする間、男性には食料などを運んでもらったりするため最低3年は傍にいてもらう必要があり、それには男性がどれだけ頼りになるかを言葉で見分けなければならなかったために男性が発した言葉や行動などを記憶し、それを頼りに男性を見分けるようになったからと考えらています。(だから女性は男性の甘い言葉に弱いのかもしれません。)
哺乳類の中で、つがいで子育てをするのは3%しかいませんが、人間は、子育てをするために恋愛システムを進化させていったのだと考えられます。
しかし、、恋の中枢が活発に活動し、ドパーミンに脳があふれるのは長くて18ヶ月から3年という研究結果があります。それは人間の赤ちゃんが、とりあえず未熟な状態を脱するのが3年、狩猟採集社会では出産の間隔が4年ということを鑑みると、恋はこの間だけでも保たれるように進化したのかもしれないと考えられます。
先日、結婚掲示板で話題に上がった本 "The Seven Principles For Making Marriage Work" 「愛する二人別れる二人―結婚生活を成功させる七つの原則 」 (※ハンドルネーム・エッフェルさんが紹介してくださっていました。末尾にエッフェルさんの紹介文を転載しておきます。)。実は私も、もう何年も前に買って持ってはいたのですが、最初の10ページあたりで放り出していました。でも、結婚掲示板で話題になったのをきっかけに、また読もうかと地下室の本棚から出してきていたのですが、折りしも、この本の作者ジョン・ゴッドマン博士が、番組の中に登場して、とてもタイムリーでした。
ゴッドマン博士は、長年、夫婦関係の研究に取り組み、夫婦の会話をモニターし分析することで85%の確立で、その夫婦が近い将来離婚するか否かをあてることができるようになったというのです。
番組では実験ボランティアとして登場した危機を迎えている夫婦を追います。博士が別室でモニターを通して観察する前で、敢えて、夫婦はいつも喧嘩に発展する話題について会話を始めます。夫婦の指にはそれぞれ心拍数を計る機器も取り付けられています。
会話の出だしを見ただけで博士は、この二人の会話は口げんかに発展すると予測しました。そして実際に予測どおりになりました。
まず夫が妻のクレジットカードの多額の支払いについて批判的なものの言い方をします。(クレジットカードの支払いが来る度に、その多額に驚かされる。過去何度か君の多額のクレジットカードの支払いや税金の支払いを僕があわてて全部払ったよね。I don't wanna surprise like that.ウンヌン。)すると妻の顔は、即座に硬直し防御体制(自分の立場を守る体制)になります。あとは、お互いに批判、防御を繰り返した後、やがて夫が妻を見下した言い方をします。「クレジットカードをリボリング払いしないようにと言うことは誰でも知っている当たり前のことだよ。全ての専門家に聞いてごらん。」(誰もが知っている常識なのに妻だけが無知だと見下している。)
博士によると話し合いが泥沼化するコミュニケーションパターンとは、「批判、防御・・(批判、防御の繰り返し)・・・・、繰り返しの果てに見下し発言、不毛な口げんかへ発展」だそうです。(上記夫婦の場合、もし、会話の最初に夫が批判的な言い方でなく、「月末に多額の支払いが来るのではないかと不安に思っているんだ。」というように、気持ちを批判の形でなく告げるだけであったら、会話の展開は違っていたと言います。)
このような会話パターンが繰り返されると夫婦は、やがて、お互いを避けるようになり離婚へ発展する、正に典型的パターンそうです。
心拍数を見てみると、二人の心拍数は会話を始める前は70前後ですが夫の心拍数は会話が進むとともに100を越え大きなストレスを示します。ところが、妻の心拍数はほとんど変わりません。
これは進化の段階で、男性は狩猟などで刻一刻と変わる環境の中、危険にさらされる機会が多いため、警戒心を維持し、危険に俊敏に対応できるために、心拍数や血圧がが上がり、いつでも攻撃態勢に入れるように発達していったため、一方、女性は母乳を与え、子どもを育てるためのホルモンの関係で気持ちを落ち着かせる能力が高いためと考えられています。
会話において、男性は批判を攻撃と受け止めるため、心拍数が上がるのです。
この夫婦の会話は、最終的に夫が、心拍数が105あたりを越え、狩で言うと戦闘モードに入ろうする心拍数に達すると同時に、「これ以上、話ても仕方ない。」とカメラに手で合図をして会話を一方的に打ち切ります。このような行動も非常に典型的な男性の行動パターンです。会話を一方的に打ち切る85%は男性。男性は、心拍数の限界に達してしまうと、衝突を回避しようとするからです。
進化で獲得した、このような男女の特徴が、現代社会の夫婦においては、夫婦の亀裂を生む原因になってしまっているというわけです。
このパターン、正に、私と夫の会話パターンにも当てはまります。見ていて深く深く納得してしまいました。夫は正に狩猟型・原人的性格、非常時にこそ、大活躍できるタイプの人間です。多くの人がフリーズしてしまう場面でも、すばやく対応できる人だと思います。元々は、そんな力強い部分、リーダシップのある「男の中の男」的な部分に惚れたわけですが、そのような狩猟型・原人的性格は、夫婦の日常の平和なコミュニケーションにとっては、障害だったわけです。
男女関係の障害となることが二つあります。
○男性が女性の気持ちを読み違えててしまう
○会話に対する男の女の違いー男性は解決する問題がないときは夫婦の会話に積極的でない
女性と男性のコミュニケーションの仕方の差も人類の進化に由来すると考えられています。女性は共同での採取生活や子育てなどの中で部族の他の仲間との会話を通して絆を深めることが大切だったため、他人の表情を読む能力がより進化しましたが、男性は、狩などで刻々と変わる情況に対応し、問題を解決するために会話は使われてきたました。実際に研究結果から男性は相手の表情から気持ちを読む能力に劣っていることがわかってます。
博士によると、このような夫婦の悪循環会話パターンを変え、平穏な結婚生活を長く続けていくには、男性側が、女性のニーズを察知する努力をしてコミュニケーションの仕方を変えるのが一番だとゴッドマン博士は提言しています。番組の最後の方では、夫婦が専門家の下で会話の方法を学ぶ姿が映し出されます。夫婦二人が向き合って模擬会話を進める内に、妻の話に対して、すぐに分析したり批判したりしようとする夫にカウンセラーが注意を促していました。
結婚生活の入門書だと私が思う "MEN ARE FROM MARS,WOMEN ARE FROM VENUS" 「ベスト・パ-トナ-になるために--分かち愛の心理学」を書いたジョン・グレイ氏も、同様に、そもそも男性と女性の思考回路が違うことを指摘していました。私と夫も、結婚して数年目に危機が訪れた時に、友人に薦められてこの本を読み、講演会のビデオまで見て随分と学びました。最も、役に立ったのがReportとRapport(ラポア)という言葉でした。簡単に言うと、男性が話す時はReport=報告するためや、問題があるなら解決するために、何か目的をもって会話をしようとする。でも女性は、Rapport=調和のために、つまり感情的につながるために会話をしようとする、ということです。
たとえば、それまで、私は夫が私の話を聞いているのかいないのか相槌をあまり打たないこと、私が話していると、すぐに"What is your point?"「会話の要点は何?」と話の腰を折って聞いたり、"What do you want me to do?"と怒ったように言ったりすること、夫にただ話しに耳を傾け同調して欲しいだけなのに、すぐに解決策を示そうとしたりすることなどに不満に思っていました。でも、そのような夫の会話パターンが実は典型的な男性の行動なのだと、この本を読んでわかり、いちいち夫の反応に失望しないようになりました。
夫は夫で、私がなぜ余り要点を得ない話をするのか、解決策を示しているのに妻はなぜ不満気なのか、などを理解でき、ただ私の話に耳を傾け、適当な場所で相槌を打つことを学びました。
それから何年も経った今でも、私が夫に話しかけると、たまに夫は「君はReportしたいの?Rapportしたいの?」と聞いてきます。そしてRapportだと私が言うと(いちいち聞かなくても大抵の場合Rapportなのですけど)、解決策を話したくてウズウズする気持ちを抑えて、黙って耳を傾けるようにする時があります。
何かの雑誌に、一番うまく行く男女の組み合わせは、「女性のような男性と女性らしい女性」、一番うまく行かないのが「男性らしい男性と、男性っぽい女性」とありました。命がけで狩をすることのない現代社会においては、何百万年もかけて培かってきた男性的能力は、無用の長物とは言わないまでも、近代の特に平和な社会での男女関係には、大きな障害になっているようです。
実に男と女は難しいです。
また、"The Seven Principles For Making Marriage Work"を読んでから本の感想など書きたいと思います。
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結婚を後悔した時に読むお勧めの本 by エッフェル
(SweetHeart「結婚生活なんでも掲示板」の書き込みから・・・エッフェルさん、勝手ながらこちらにも引用させていただきます。)
後悔したときに、やり直すために努力しようと思うから本をお読みになるのですね。私も同じです。とある本に出会って、希望の光を見出しましたが、現実はまだ茨の道です!でも読んでみてよかったと思うので、図書館か本屋で探してみてください。和訳もあります。
愛する二人別れる二人―結婚生活を成功させる七つの原則
ジョン・M. ゴットマン (著), ナン シルバー (著)
ちなみにこの本は、イラクに駐留しているアメリカ兵向けのマリッジカウンセリングにも使われているそうです。リンク先がメインテナンスでダウンしているみたいなので、うろ覚え詳細を書くと。。。
現在イラクに駐留しているアメリカ兵は配偶者との関係が上手くいかなくてカウンセリングを受けている。離婚率は七割近かったと思います。そして離婚やその手続き中に欝になり自殺する兵士もいる。カウンセリングを担当しているチャプレンが、この本を導入したところ希望者が続々と増えている。そのためほんの寄付を募って、この本をイラクに送っているそうです。アメリカにいる配偶者にも同じ本を同時に読み勧めてもらい、課題などを一緒に(別々ですが)取り組んでカウンセリングに役立てているそうです。
効果のほどは数に出ていないので分かりませんが、それだけ多くの兵士が結婚の危機に直面しているということです。(戦争についてはそれぞれ異なる意見があると思いますが、こういう例もあるということでご紹介しています。)
この本は一度読んでおしまいではなく、時々引っ張り出して来ては読み返すのが良いですよ。私も頻繁にお世話になっています。この本が必要ないカップルが羨ましいと思います(笑)
我が家は嫌がる夫に対して無理やり朗読していましたが、夫もそれなりに情報を拾って役立てています。皆さんからもっと情報が寄せられて、良い本に巡りあえると良いですね。
Sweet Heartさんのダイアリーのファンなのですが、自分のハンドル名が挙がっていてビックリ。おまけにコメントまで再掲載されていて二重に驚きました。でもお役に立てたみたいで良かったです。そのNHKスペシャル、私も見たかったです。
以前の書き込みで貼れなかったリンクをこの機会にご紹介させていただきます。勧誘ではありませんので、予めご了承ください(笑)
http://gottmancatalog.orderport.net/1450/productpage.asp?id=2456
http://www.gottman.com/
この本をお読みになるとお分かりになると思いますが、夫婦関係に決定的な亀裂が入る前に(four horsemenが登場する前に)、常日頃から小まめなメンテナンスが必要なのだと学びました。
どうぞご主人と一緒に遊び感覚で取り組まれてください。 エッフェル
早速コメントありがとうございます。ダイアリーのファンとおっしゃっていただいて嬉しいです。今ふと、もしかしたらYoutubeでも見られるかと思ってJohn Gottmanで検索してみたところ、いくつかGottman氏の講演を見ることができました。
面白かったのがこちらです。http://www.youtube.com/watch?v=Xw9SE315GtA&feature=channel
結婚生活において、相手に対してポジティブな部分が5、ネガティブな部分が1だと、結婚生活はうまく行くと言うのです。それだけネガティブな部分のインパクトが大きいということのようです。
ご紹介いただいたクリップ、見てみました。 どうもありがとうございます。離婚するカップルのネガティブポイントが8。たった3ポイントの差という気もしますが、ポジティブとの比率が1対8となればかなり厳しいですね。カップルの数だけドラマがあるなんて思っていましたが、ゴッドマン博士から見ればどのカップルも似たり寄ったりなのでしょうね(笑)科学的に証明されているという博士の方法、もっと広まれば良いなあと思います。科学的、というところに胡散臭いと思うか(私の夫)信頼できると思うか(私)人それぞれなのでしょうが。またSweet Heartさんからの書評を楽しみにしています。
離婚するカップルのネガティブとポジティブの比率が1対8。つまり、1週間で考えると1週間に1~2日はポジティブに暮らせれば夫婦はなんとかなるけれど1週間毎日暗いと離婚したくなるという感じでしょうかね。
もちろん、それプラス色々な環境要素が影響していると思いますが。
こんにちは。ダイアリーを読んですぐ図書館で予約しましたが、借りられたのは3月になってからでした。以前からこのサイトで紹介されていて知っていたのに、早く読んでおけばいくつかの喧嘩は防げたはずなのにと思いました。この手の本は買っても手元に置くほどでもないと思うことが多かったので、待たされても図書館で借りて読みましたが、改めて購入しようと思いました。時々読み返すと良いかなと思います。特別なことが書いてあるわけではないのですが、なるほどと思わせられました。
そうなんですね。時々読み返すことがとても大切だと私も思うのですが、ついつい読んでその時は、なるほどと思いつつ、忘れるんですよね。