先日、友人達と感動した映画の話をしていた時、友人の一人が忘れられない作品の一つとして挙げていた映画です。私も「ヴェニスに死す」というタイトルの美しさからか、名前だけは知っていましたが、映画は初めて見てみました。
1911年。世界各地の富裕層が避暑に訪れるヴェニス。そこに静養に来ていた老作曲家が、ポーランドから訪れていた美しい少年タジオに理想の美を見出し心を奪われてしまいます。そんな中、ヴェニスではコレラが大流行を始めます。老作家は早くヴェニスを去らねばと焦燥感を感じながらも、タジオへの思いに決意が鈍ります。最後には髪を染め化粧をほどこしタジオの姿を求めて町をさまよいながら自らもコレラに感染してしまい、毛染めも化粧も流れ落ちた姿で美しい海辺で戯れるタジオの姿を見つめながら息絶えます。・・・と荒筋だけ書くと、かなり悲惨な話です。
とにかく老作曲家が心奪われる少年タジオが芸術的に美しく、それとは対照的に、毛染めや化粧が流れ落ちた姿で一人死んで行く老人の姿が、なんとも対照的です。
少年タジオを演じのはビョルン・アンドレセン。友人が、とにかく美少年!と強調してはいましたが、映画を見て、私も、冷たさを秘めた気品のある美しさに圧倒されてしまいました。映画の中では、青年になる直前の少年のはかなく美しい一瞬の時を見事に切り取って観賞用の美術作品のような美しさで見せてくれます。
これを眺めながら、「ヴェルサイユの薔薇」の中のオスカルみたい!と思ったのですが、Wikipediaで調べたところ、彼はこの映画の後、日本に長期滞在しながら日本のCMにもいくつか出て日本の美少年文化、特に少女コミックの世界に影響を与えたと書いてありました。
この記述を読んで「なるほど!!そうだったのか!!」と、なんだか謎解きができたような嬉しい気持ちになりました。昔、読んだ「ポーの一族」「風と木の詩」「ヴェルサイユの薔薇」を初めとする危うい香りのする同性愛的美少年の世界は、ここに原点があったのか!と。そして、それは現在、日本のテレビ界を席巻しているジャニーズにまでつながっているのかもしれません。
以前、書いた「日出処の天子」(山岸涼子)の世界も正にビョルン・アンドレセエンのイメージとバッチリ重なります。
http://www.sweetnet.com/shnikki/2006/11/post-67.html
それにしても、「ヴェニスに死す」・・・なんと美しい邦題でしょう。"Death in Venice"が英語タイトルですが、これは「ヴェニスで死ぬ」とか「ヴェニスでの死」としたら、映画のイメージ自体が全く変わってしまっていたと思います。たった一つの助詞、たった一つの動詞の変化形で全体のイメージさえ変えてしまう・・日本語の美だなーと思ってしまいました。
最近のコメント