防災システム研究所ホームページ
過去に起こった様々な天災、災害の記録とそれに対する課題、対策をまとめてあるサイトです。
「津波心得の碑」のページでは先人の残した全国各所の津波警告の石碑の内容を書き起こしてありますが、その一つで1854年に建てられたものに、「百五十年前の宝永四年(1707)の地震の時にも浜辺へ逃げ、津波にのまれて死んだ人が多数にのぼった、と伝え聞くが、そんな話を知る人も少なくなったので、この碑を建て、後世に伝えるものである。」と書いてあります。
後世になんとか伝えようとした人の気持ちが、時を越えて伝わってくるとともに、人間の記録と記憶の限界を感じます。
また、恐らくこれは今回の災害以前に書かれているのだと思いますが、津波防災三か条として明治三陸地震津波で津波が30分以内に襲ってきたこと、北海道南西沖地震の例を挙げて、車では逃げないこと、津波は二波、三波と来ることも警告しています。
山村市の以下の政府への提言も、全く生かされていません。
「東海地震は予知できたら儲けもののつもりで、原則は予知できないことを前提にした防災対策に切り替えるべきと考える。なぜならば、予知を前提としたこの法律制定後26年、この間に発生した大地震(北海道南西沖地震、鳥取県西部地震、芸予地震、宮城県北部地震、十勝沖地震)は、どれ一つ予知できていないからである。法律で定める以上、もっとしっかりとした根拠によるべきではなかろうか。そうしないと膨大な予算の無駄遣いと現場の混乱を更に続けることになる。」
被災から今までの、さまざまな報道を総合すると、このように警告を発し続けた人たちの意見は、政府によって、ことごとく無視され続けてきたのだと感じます。
このサイトでは、他にも今後起こりうる地震への警告、防災計画、災害対策も記してありますので、読んでおいて決して損はないでしょう。
またSweetHeartでも2005年から掲載している「最悪の事態から生還する方法」も是非合わせて読んでいただければと思います。特に、山村氏も「防災心理学」のページで述べている、「多数派同調バイアス」(majority synching bias)については、日ごろから意識しておくと良いのではないかと思います。
つまり、「過去経験したことのない出来事が突然身の回りに出来したとき、その周囲に存在する多数の人の行動に左右されてしまう。」ということです。「最悪の事態から生還する方法」では911やパンナム飛行機事故の人々の行動例を挙げています。山村氏の記事の中では韓国の地下鉄放火事件の人々の行動例を挙げています(特に掲載されている人々が煙のたちこめる地下鉄に平然と座っている姿には驚かされます)。
つまり、これは国民性に関係なく起こりがちな人々の行動パターンなのだとは思いますが、日本人、特に東京人は公共の場において、特に無関心であったり、他人の行動を見て自分の行動を決めるような傾向があると思うので、より一人ひとりが危機感を持つことが大切だと感じます。
以前、SweetHeartのメルマガに掲載した記事を思い出しましたので、再掲載します。
「知り合いがNYの日本領事館の危機管理セミナーで聞いたという話が大変興味深かった。ちょっと古い話になるが、1997年エジプトの観光地ルクソーにおいてイスラム過激派組織に所属する武装グループ6名が観光客に向けて銃を乱射、日本人10名を含む外国人観光客58名及び現地警察官等4名の計62名が死亡した事件についてである。
当時その場には、被害者の倍以上のスイス人、アメリカ人を多く含む観光客がいたという。スイス人の被害者もかなり多かったそうだが、一部は柵を乗り越えて7メートル程の高さを飛び降りて難を逃れ、アメリカ人は、葬儀殿の奥に隠れて一人も被害者がいなかったそうである。ところが、日本人はJTBツアーに参加していた10人全員が葬儀殿の真ん中で固まって射殺されていたという。
つまり、銃声を聞いた場合、日ごろから危機管理意識の強いアメリカ人、スイス人はとっさに伏せる、物陰に隠れるなどの行動を取ったけれども、危機感が薄く、周りの行動を見てから自分の行動を決
める日本人は、とっさに何もできずに全員固まったまま標的になってしまったのではないか、というのである。」
このことを多数派同調バイアスの観点から考えてみると、アメリカ人やスイス人、全員が危機管理意識を持っていたというよりは、スイス人には、少なくとも一人危機管理意識の強い人が柵を飛び越え、他のスイス人がその人に続いた。アメリカ人には、やはり少なくとも一人危機管理意識の強い人がいて葬儀殿の奥に隠れ、他のアメリカ人が続いた。ところが、日本人には、誰一人として危機管理意識を持つ人がいなかったとも考えられないでしょうか。
一人の危機感の持ち方によって、もしかしたら多くの危機感のない人の命も救われる可能性があるのかもしれません。
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