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今回、乳幼児突然死症候群(SIDS)について取り上げたきっかけは、元イギリス在住アティコさんに頂いたメールでした。
アティコ |
確かに日本の乳幼児突然死症候群(SIDS)のサイトをネットで当たってみましたが、情報が非常に乏しいと感じました。そこで、今回はアティコさんに頂いたイギリスの資料と、アメリカの資料を参考にして、私達が簡単に実行できるSIDS防止の注意事項をまとめてみました。
乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)とは、何の予兆もなく乳幼児に死をもたらす疾患で、日本での平成13年における死亡数は300人、その約9割が1歳未満です。(乳児期の死亡原因としては第3位)ほとんどのSIDSは寝ている間におきるために“crib death”(イギリスでは cot death)とも言われています。
the National Institute of Child Health and Human Development (NICHD)によるとSIDSは6ヶ月以下の乳児に起こりやすいこと、また寒い時期に起こりやすいこと、女児よりも男児に起こりやすいことはわかっていますが、そのはっきりとした発生原因は、いまだに不明です。しかしながら、SIDS発症に関連のある因子についてのさまざまな研究の結果、いくつかのことを積極的に実行することにより、死亡率が低下することが明らかになっていますSIDS予防対策
≪参考資料: US Public Health Service, American Academy of Pediatrics &Birth to five by The Health Education Authority,England その他≫
赤ちゃんを固いマットレスに寝せる。枕の上、ウォーターベッド、シープスキンや他の柔らかいものの上に決して寝せないこと。ふわふわの毛布、ぬいぐるみ、枕を赤ちゃんの傍に置かない
赤ちゃんが寝ている時に、部屋が暖かすぎないかをよく確認する。大人が半そでシャツで心地良い位の気温に保つ。暖めすぎを防ぐため肩から上にかからないよう、軽い毛布のみをかける
特に赤ちゃんが風邪をひいているときの暖めすぎに注意
妊娠中の喫煙、飲酒をしない(父親の喫煙も含む)
赤ちゃんを定期的に健診に連れて行く
できる限り母乳で育てる
6ヶ月までは、ベビーベッドを母親の横に置いて寝かせるといい
親が飲酒、喫煙、薬を飲んでいる(風邪薬等眠くなるようなもの)場合は添い寝をしない
”FEET TO FOOT"ポジション(ベビーベッドの一番下(FOOT)に赤ちゃんの足(FEET)をつける、ということです。こうすることによって、赤ちゃんがそれ以上下に動かないのでCoverのしたに入ってしまうことがない)
プラスティックシーツやベッドの飾り、モビールなど、赤ちゃんが絡まってしまう可能性のあるものを近くに置かない。(アメリカでは先日ブラインドの紐に絡まって死亡した赤ちゃんがいました。)
ベッドフレームとマットレスの間に隙間がないようにする。お下がりのベッドを使う場合には、ベッドがしっかりと堅く、清潔であるかチェックする。
1歳以下の子どもには枕を与えない。クッションやソファー、アームチェアーの上などで昼寝させない
ストーブのそばやホットカーペットの上に寝かせない
赤ちゃんのいる部屋で、だれであってもタバコを吸わないこと
睡眠中の、毛布、羽毛布団、赤ちゃんの帽子、靴下、足付きロンパース、着せ過ぎなどは、赤ちゃんの放熱を妨げるので注意すること
暑すぎるお風呂に入れない
うつ伏せねについて
乳幼児突然死症候群(SIDS)の要因として最もリスクが高いと言われているのがうつ伏せねです。その原因は、はっきりと断定されたわけではありませんが、一説として乳児が柔らかいマットレスや布団で寝ていた場合、またはぬいぐるみ、枕等が乳児の近くにあった場合に、乳児の口の周りに吐いた息が封じ込められ、それを再び乳児が吸い込むことにより体の中の酸素量が減ってしまい(二酸化炭素が増え)酸欠状態になるというものです。
また、正常な乳児の場合は、新鮮でない空気を吸い十分な酸素が得られない低酸素状態場合、目を覚まして泣くけれでも、弓状核(延髄にある小神経細胞群――睡眠中の呼吸と覚醒をコントロールする)に異常がある乳児の場合、そのような反応が起こらず眠り続けるため、SIDSの危険が非常に高まるという説もあります。
アメリカ小児科医アカデミーでは1992年に健康な乳児を仰向けに寝かせようという"Back to Sleep"キャンペーンを始めました。
キャンペーン以前には70%の乳児がうつ伏せねでしたが、1997年までには21%に現象しSIDSも43%減少しました。
アメリカでは親子代々うつ伏せねをさせてきた文化があり、仰向け寝にすると乳児が吐いた物で窒息死すると、恐れる人も多いのですが、アメリカ小児科医アカデミーでは、そのような心配はないとしています。また、仰向け寝によって後頭部が平になってしまうことを嫌う親もいます。実際仰向け寝キャンペーン以降、後頭部の平な子が非常に一般的になりましたが、これは赤ちゃんの向きを頻繁に変えたり、赤ちゃんが目覚めている時に、うつ伏せにすることによって防げます。(何らかの疾患で特に医師にうつ伏せねにするように指示されている場合は医師の指示に従う)
赤ちゃんの放熱を妨げる暖めすぎについて
SIDSで亡くなった子どもの調査で「衣類(帽子・手袋・靴下など)布団の着せすぎ」「亡くなって時間が経っているのに体温が高い」「汗をかいている」などの検査結果もあります。
着せすぎや高温環境によって体温が上昇し、赤ちゃんはうつ熱状態になります。そこで、赤ちゃんの体は体温をそれ以上高くしないために、筋肉を弛緩させ、汗をかき、眠り続けます。その結果、呼吸が抑制され、血液中の酸素量が少なくなる低酸素状態となり命の危険にさらされる可能性があるということです。
アドバイス
薄手の洋服を着ている大人がちょうどいいと感じる以上の温度の部屋で寝かせない。(薄手の洋服を着ている大人がちょうどいいと感じる温度で寝せる場合、赤ちゃんに一枚さらに薄いもの着せるか、一枚薄いものを掛ける程度が好ましい)
羽毛布団は避ける。(羽毛布団を使っている親のベッドで添い寝した場合に特に注意)
赤ちゃんが暑すぎないか寒すぎないかチェックするのに、首の後ろ、または、おなかを触るといい。もし手足がつめたくてもこれらの場所が触って冷たすぎなければ赤ちゃんにとってちょうどいい温度(暑すぎの場合も同じ)
あとがき:この記事を書いたのは、もう何年も前になりますが、2016年現在でも、お子さんをSIDSで亡くされたという方から、このような情報を知っていれば、「子供を亡くさずに済んだのに。日本には情報が少なすぎる」というようなメールをいただきました。そして、つい先日も、SIDSで亡くなった赤ちゃんのニュースを読んで、注意書きが大人のベッドで寝せないようにという一行のみだったのが、とても残念でした。