たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く

久々にワクワク・ドキドキしながらページをめくり、一気に読んでしまった本でした。ロシアのコサックの母と日本人の父の間に満州で生まれ育った少年ビクトル(11歳)は敗戦直後の引き揚げの混乱の中、母とはぐれてしまいます。

白系ロシアの母から受け継いだ風貌のために、引き揚げ列車から、「ロ助(ロスケ)」と言われて、突き落とされ、たった一人で大陸を南下することになった少年ビクトルは、コサックの祖父から教わった自然の中で生き残る英知を、フルに生かして、数々の危険を乗り越えながら、4ヶ月をかけて、たった一人で1,000キロの道のりを歩きとおし、引き揚げ船の出る港までたどり着き、さらに何年もの時をへだてて母親と再会する感動の実話です。

主人公はサンボというロシア格闘技の達人、ビクトル古賀という方で、現在もご存命の方で検索すると、多くはないでうすが、情報が出て来ました。Youtubeにもサンボを指導する様子が出ていました。

私は、もしかしたら前世は第二次世界大戦時は外地で戦争に巻き込まれて死んだのか?と思うほど、高校生の頃から、引き揚げの話や南方戦線の話などに興味を持っていて、このブログでも、「大陸の花嫁」「赤い月」「運命の足音」などを紹介してきましたが、この本は、こどもの視点から書かれて入るため、今まで読んだ本とはまた異色で、大変興味深かったです。(本人が語ったものをライターが執筆するという形で書いています。)

話は、まるで母を訪ねて3,000里のようでもあり、また終戦時の混乱に巻き込まれた子供の話ということで、 映画Empire of the Sun (邦画名「太陽の帝国」)とも通じるものがあります。(この映画では、上海で裕福な生活を’していたイギリス人の少年が、やはり戦後の混乱の中、親とはぐれてしまい、一人中国に取り残されてしまいますが、運命に翻弄されながらも、かたくなに生き抜く自伝を元にしたスピルバーグの手による映画です。)

きっと、当時は少なからぬ子供達が同じような目に遭い、運と英知に恵まれた少数の子だけが生き残ったのでしょう。

この本の中では、少年の目を通して見る戦争の悲惨さと、極限状態で失われる日本人のモラル、人間の弱さも如実に描かれています。ビクトル少年は、様々な異郷人が交差する場所で育ったマルチリンガル、マルチカルチュアルだったために、日本人への観察眼がとても客観的す。